『魔女の宅急便』の主人公キキは、ある日を境に急にほうきに乗って飛ぶことができなくなってしまいます。
魔女の血によって空を飛び、自分の持って生まれた才能を生かして宅急便の仕事をしていた彼女にとってはこれ以上無いほどの大事件。
キキは『魔法の力が弱くなってる』と考えますが、魔法が使えなくなってしまった本当の理由はどのようなものなのでしょうか。
この記事では、魔女のキキが魔法の力が弱くなって使えなくなった理由について成長説や生理説を交えながら解説していきます。
目次
魔女の宅急便のキキの魔法が弱くなった理由
『魔女の宅急便』を見て最も気になるシーンはキキが空を飛ぶ力を失ってしまったところ、という方も多いのではないでしょうか。
キキは『魔法が弱くなった』と言いますが、なぜキキの魔法は弱くなってしまったのでしょうか。
ここではまず、キキの魔法が弱くなった理由について考察します。
キキの魔法は弱くなっていない
まずはじめに、魔女のキキは決して自身の魔法の力を弱めてはいないと考えられます。
なぜなら、ほうきに乗って空を飛ぶその力は『血』によるものだから。
要するに遺伝です。
ただ、人間と魔女の血が混じり合っているのがキキですから、純粋な魔法使いではないだけ魔法の力は弱いと言えるかもしれません。
しかし急に飛ぶことができなくなってジジの言葉がわからなくなってしまったキキは、『自分の魔法が弱くなった』と勘違いしたのです。
これは彼女も後によく理解することになるでしょうが、キキが飛べなくなった理由は『なぜか飛び方がわからなくなってしまった』からなのです。
幼いころから意識せずに出来ていたことが、ある日を境に急に出来なくなるなんて不安ですよね。
意識すればするほど、今までどんな風にやっていたのかがわからなくなってしまって出来ない。
そういうことがキキにも起きたのです。
飛べなくなったのは嫉妬が原因
キキはある日飛べなくなりますが、その前にあった出来事を思い出してみると・・・
仲良くなった男の子のトンボと同世代の女の子が仲良くしていたり、空を飛ぶ大きな飛行船の存在に目を輝かせていたりしていましたよね。
つまり、キキは自分でもよくわからないモヤモヤした気持ちに支配され、自分の存在価値ってなんだろうと考えてしまったのです。
魔女である自分に興味を持っていてくれていると思っていたトンボは他の女の子とも仲が良いし、自分にしかできない芸当だと思っていた『空を飛ぶ』ことは、飛べない人間が開発した飛行船の登場によって覆されます。
自分の特権だと思っていたが、そうじゃなかった。
トンボは空を飛べない女の子とも仲良くするし、飛行船は自力で飛ぶ力の無い人間を乗せて空を飛ぶ。
これが、キキのモヤモヤした気持ちの正体でしょう。
いわゆる、嫉妬です。
普通の女の子や、空を飛べる大きな飛行船にヤキモチを焼いてしまったというワケです。
しかも嫉妬だけではなく、せっかく見つけた自分の居場所を失くしてしまうかもしれない焦りもある。
トンボは魔女じゃない普通の女の子に恋するかもしれないし、飛行船ならたくさんの荷物を一度に遠くに運ぶことも可能なのですから。
嫉妬心がキッカケとなり、キキは魔女の存在や魔女の力は他で代替可能なのかもしれないという考えに至ってしまいました。
だからこそ『魔女が空を飛ぶこと』を強く意識しすぎてしまい、かえってうまくできなくなってしまったのです。
魔女の宅急便のキキの成長説と生理説
キキが飛べなくなってしまった理由として、よく言われるのが成長や初潮を迎えたからという内容のもの。
たしかに13歳は思春期にあたり、体も心も大きく変化する年齢です。
ここでは、キキが魔法を使えなくなってしまった理由の『成長』と『生理』についてまとめていきます。
キキは成長したから飛べなくなった
魔女のキキは、魔女の血を受け継ぎ、幼いころから特別に意識することなくホウキに乗って空を飛べていました。
確かに高い木に鈴をつけて高度を確かめなければならないという上手下手はあるものの、いくら練習しても空を飛べなかったという経験は持っていないのです。
意識しないで出来ていることが意識をしてしまったことで出来なくなってしまう、そういう経験がある方も多いと思いでしょう。
つまりキキは、『空を飛ぶ』ことについて思いを巡らせるような年齢になったのです。
ふとホウキに乗って飛ぶことについて『やり方』を考えたら・・・あれ?わからない。
人間の作った飛行船は手順を整えれば空を飛びます。
でもキキの飛び方はキキにしかわからない。
トンボにも説明したように、魔女は魔女の血で飛ぶのだから。
同じ魔女であるお母さんに『どうやって飛ぶんだっけ?』と聞くこともできません。
生まれたときからずっと一緒にいたジジの言葉だって、急にわからなくなってしまいました。
飛べたはずなのに飛べないのはどうして?
もしこのまま飛べなくなったら自分はどうなる?
宅急便の仕事どうしよう・・・
頭の中では、色々な思いがグルグルしたはずです。
かつては何も考えずとも移動手段として飛べていた単純で幼い心は、もうキキにはありません。
自分の才能である『飛ぶこと』について考えを巡らせなければならない、使い方や使い道を学ばなければならない。
それはキキが大人への道を進み始めたから。
大好きな絵なのに、ある日『人のマネ』だと気づいて描けなくなってしまったというウルスラと同じですよね。
魔女でなくてもトンボと仲良くできる女の子、魔法を使わなくても空を行く飛行船。
身体や心の成長とともに、今まで見えていなかったものが見えてくるのです。
キキが飛べなくなったのは生理で体が変化したから?
キキがほうきにまたがり、飛べないことに衝撃を受けるシーン。
これは、初潮を迎えたキキの体の変化によるものだと言われています。
心も体も大きく変化するのがキキぐらいの年頃ですから、生理がきたからだとの解釈もできますよね。
ただ、生理を暗喩しているかもしれないとは言え、映画の中の熱を出して寝込むシーンなどは本当に風邪をひいたのでしょう。
大雨の中を必死に飛んで運んだのに、それが歓迎されない荷物だったのです。
気力も無くなっちゃいますよね。
生理説は、この寝込んだシーンの後に魔法が使えなくなってしまったことから。
身体が変化したから魔法が使えなくなった。
トンボに恋をしたキキは大人になった、つまり成長して生理がきた、と解釈されるのです。
ジジと会話ができなくなったのも、キキが子供じゃなくなったから。
自分以外の他者と関わって生きていく年齢に達したことにより、自身の心の分身とも言えるジジとの会話は不要なものとなったのです。
生理云々もありますが、思春期は身体や心の大きな変化に戸惑うもの。
そういった葛藤を描いた、大人になってからも響く作品と言えますよね。
まとめ
魔女の宅急便のキキはある日を境に空を飛ぶことができなくなってしまいます。
彼女曰く、『魔法の力が弱くなってる』。
しかし実際は、魔法の力が弱くなったというよりも心と体の成長により魔法の使い方がわからなくなってしまったということだと考えられます。
生理説も、キキが成長したからこその内容です。
同じ年頃の女の子や空を飛べる乗り物に対する嫉妬心、ジジとの会話ができなくなったこと、同じような経験をした誰かに助けてもらうこと。
今回のスランプは、キキが子供から大人へと変化する過程で起きています。
トンボの危機によって、空を飛ぶ力を取り戻したキキ。
でも今までとは違います。
『飛べ』の掛け声は、無意識では飛べなくなったからこそ出た言葉なのではないでしょうか。
初めてのスランプは自身の能力について考えるキッカケになったでしょうし、これからだって何度もスランプに陥るでしょう。
そんな時でもキキならきっと、周りの人の助けを借りながら乗り越えて成長していけそうですね!
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