ゴールデンカムイに登場する尾形百之助(おがたひゃくのすけ)はなぜ最後、自分自身に銃を向けたのでしょうか。
なんで急に自分を撃ったの?
杉元と列車の上で繰り広げた激戦は最悪相打ちにできたのでは?
そんなふうに思う方も多かったのではないでしょうか。
この記事では尾形はなぜ自害したのか、自分を撃ってしまったのはどうしてなのか、自殺によって死亡した理由についての考察を行います。
目次
ゴールデンカムイの尾形はなぜ自害したのか
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尾形の目的は金塊そのものではなく、地位を手に入れること。
第七師団長の立場なんぞ偽物でも成り上がれる、中将だった父も少尉だった弟もたいして立派なものではなかったと証明するため。
戦況によって身の置き方を変え手段を選ばない冷酷さを見せることもあった彼はなぜ突然、自害の道を選んだのでしょうか。
まずはじめに、尾形が自殺してしまったのはどうしてなのかを解説します。
尾形は負けるつもりも死ぬつもりもなかった
尾形は元々、杉元らに負けるつもりも死ぬつもりもありませんでした。
なぜなら先述の通り、第七師団長へ成り上がるという野望を持っているから。
父に選ばれなかった息子でも、同じ地位を手に入れられることを証明したかったから。
第七師団長なんてたいして立派なものじゃないと感じたかったから。
鶴見中尉をも出世に利用しようとしているしたたかさは、目の前に迫った死を前提としているとは思えません。
さらに、猛毒の矢を腹に受けても『まだ死ねない』という意思表示をしています。
実際、体に残ってしまった毒のついた矢の先端は、腹を手近にある刀で切ってまで取り出そうとしています。
少なくとも死んだ(正確には尾形が殺した)母親を見捨てた父、父に選ばれた息子・花沢勇作を見下すまでは死なないつもりだったはずなのです。
しかし、唐突に自殺。
余計なことを考えていたら負けてしまう!そんなことを叫んでいたのに・・・
死なないつもりが一転、錯乱状態になったことによって自らを銃で撃ち抜き死亡しました。
つまり、尾形の自殺は尾形自身にとっても予想外のものだったと言えます。
アシリパと毒矢が自害のキッカケ
尾形が自殺に至るキッカケとなったのは、アシリパの存在と彼女の放った毒矢です。
毒矢は確実に尾形の体と心を蝕みました。
ヴァシリとの狙撃戦も杉元との乱闘も、それまで優勢だった尾形は毒の影響で突然混乱状態に。
毒に苦しみながらもアシリパを撃とうとしたその時、殺した弟・勇作の幻覚が目の前に現れ、尾形の心に隠されていた『罪悪感』を覚醒させます。
元々、アシリパと腹違いの弟・勇作は尾形から見て『似ている』二人。
アシリパの姿に弟を重ねてしまうほど妙な共通点を感じていました。
持ち合わせていないと信じていた罪悪感は、弟に似ているアシリパと、アシリパの覚悟の毒矢により呼び覚まされてしまったのでしょう。
毒を受け、腹を切り・・・
まるで自分が殺した母と父のように。
自分の中にも罪悪感というものがあった?
つまり殺した父と母が一瞬でも愛しあい、祝福されて生まれた普通の人間であったことに尾形は目を向けてしまったのです。
今まで目を背けてきた『罪悪感』。
罪悪感という秘めた思いがあるからこそ、これまで勇作の亡霊の顔をまともに見ることもできなかった。
しかし、ついに自分自身の罪悪感を見つめてしまった。
・・・そこから自分自身に向けて銃の引き金を引くまでは、あっという間です。
尾形が自殺で死亡した理由を考察
狙撃手・尾形百之助は、自身の目的である『地位を得て、父も弟もたいした価値など無かったと証明する』ことを果たさぬまま自ら死への道を選びました。
激戦からの唐突な自殺。
尾形のこんな最後を想像していなかった読者も多かったことでしょう。
ここでは、尾形が自殺で死亡した理由について考察していきます。
尾形の自決は罪悪感と深く関係している
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ラストを飾る第7弾は、各勢力を渡り歩く≪造反者≫、尾形をお届けです!再び土方一派を離れ、謎の幻影に惑いながらも札幌で暗躍する孤高の狙撃手を
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尾形が列車の上でアシリパの毒矢に射られ、猛毒による混乱状態となった際に見た花沢勇作の亡霊は『罪悪感』の象徴です。
これまでも度々尾形の前に姿を表していた勇作の亡霊は、尾形の中に眠る『善』の部分と言ってもいいでしょう。
尾形は言わばサイコパスなのかと思わせるような言動を見せ、また実際にそれに沿うように生きてきた人物であり、父も母も、そして弟をも殺し、多くの命を奪ってきました。
しかし毒により錯乱状態になってしまった尾形は過去の情景を思い出しながら自問自答し、ついには自分自身の中にも無いものと信じていた『罪悪感』から目を背けることができなくなってしまったのです。
父を殺したこと、母を殺したこと、弟を殺したこと。
自分の行いはすべて間違っていたのだろうか。
自身の心を保つために、敢えて罪悪感から目を背け『何も感じない人間』を演じていただけじゃないのか・・・
尾形の中に『閉じ込めていた心』と『表向きの自分』がいるとすれば、これまでの尾形百之助という人物像を作っていたのは『表向きの自分』です。
しかし幻覚の中で『閉じ込めていた心』が飛び出してきてしまった。
罪悪感に気づいた尾形と、それでも罪悪感を否定する尾形。
罪悪感を押さえきれなくなった尾形がいる一方で、杉元らに負けぬよう余計な思考を停止させようとした尾形がいる。
かなり混乱している様子がうかがえます。
つまり尾形の自害は、これまで目を背けてきた罪悪感が理由であると同時に、罪悪感などと喚く自分を殺そうとしたがための突発的な行動だったのではないでしょうか。
罪悪感を認めた尾形と認めない尾形、ふたつの心が同時に銃の引き金を引いたと言えそうです。
尾形が銃で撃ったのは精神状態が影響した
尾形は錯乱状態のまま死を選びましたが、最後は持っていた銃で目を撃ち抜きました。
他にも刀を持っていたのに、わざわざ刀を使って長身の銃の引き金を引き自分を撃ったのです。
この行動、気になりますよね。
単に自決するだけなら持っている刀で腹でも首でも刺せば済んだはず。
なんなら、しばらく時間が経てば猛毒によって命を落としたかもしれません。
それなのに、わざわざ銃を使う意味があるのでしょうか。
しかしここで忘れてはならないのは、猛毒の影響でかつて殺害した弟の亡霊(幻覚)が見えていること、そして罪悪感というものから目を背けられなかった自分がいること。
自害のその時、彼は毒によって幻覚を見て心が混乱しています。
自身が毒を受けたことで母を思い出し、腹を切ったことで父を思い出し・・・
愛してくれた人間を殺した罪悪感、愛情の元に生まれたことを理解できなかった自分。
一方で、これまでのすべてを否定されることに抗う自分。
錯乱状態であったため、長身の銃をムリヤリ自分に向けることに違和感が無く、その妙なスタイルは彼が正常な思考状態ではなかったことを意味しているものと考えられます。
一方でわざわざ自らに銃を向け目を撃ったのは、後頭部を撃ち抜いて殺した弟の死をなぞっているからとも言えます。
『閉じ込めていた心』の尾形は罪悪感を抱えきれずに自ら死を選び、そして『表向きの自分』は罪悪感を認められず、最後まで見たくないものから目を背けてしまったのかもしれません。
まとめ
ゴールデンカムイの登場人物のなかでも人気の高いキャラクター・尾形百之助の最期は、唐突に自害によって死亡するという衝撃的なものでした。
なぜ自殺してしまったのか、ファンの間でも意見の分かれるところですよね。
第七師団長という立場を目指し、父や弟の価値をたいしたものではなかったと証明したいという野望を持っていた尾形は、少なくとも目的を達成するまでは死ぬつもりなどなかったはず。
しかし弟と重なるアシリパの存在、そして腹に受けた毒矢をキッカケとして、尾形は自ら死への道を選択することになりました。
では彼を突然の自決にまで追い詰めた理由は何だったのか。
あくまでも考察と個人的見解ではありますが、これまで目を背けてきた『罪悪感』を背負ったからであるとともに、『罪悪感』などと喚く自分自身を殺そうとしたためではないでしょうか。
ひとりの体に2つの自我が存在しており、2つの自我は互いの息の根を止めようとした・・・
毒で母親を殺し、刀で父親を殺した尾形は、アシリパの毒矢をキッカケに腹を切り、幻覚の中で過去を辿って自分自身を見つめなおしました。
さらに銃で目を撃ったのは、後頭部を撃ち抜いた弟への罪悪感、そして見たくないもの(現実、罪悪感、勇作の亡霊)から逃れたいがための咄嗟の行動だったと考えられます。
相反する2つの自我が尾形の中で膨れ上がり、やがて破滅していく様は尾形らしいと言うべきなのか・・・
個人的には、金塊争奪戦後も生き残ってアシリパを支えてほしかったキャラクターでした。
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