ひな祭りが近づいてくると、たくさんの『つるし雛』が展示され、それを見学できるイベントが多くなってきます。
いくつものかわいらしい小物が降っているように見えてとっても素敵、雛人形と一緒に飾られたりしていますよね。
雛人形は一式買ったけれど、つるし雛なんてセットになってなかったよ?という方、大丈夫です。セットになっている事の方が稀だと思います。
だって、雛人形と一緒に飾られることも多い『つるし雛』は、ただの飾りじゃありません。
これ、実は雛人形の代わりとして生まれたものなのです。
目次
江戸時代のつるし雛は豪華な雛人形の代わりだった
『つるし雛』が誕生したのは江戸時代、ひな祭りに飾る雛人形の誕生時期より少しだけ後の事になります。
ところでよく目にする一般的なおひなさま、『雛人形』は十二単を着てお殿様との結婚式をイメージしていて、とても華やかで豪華ですよね。
雛人形は元々簡素なものでした。
それが人形作りの技術の発展に伴いどんどん立派なのもになり、そして家の財力の象徴として豪華に、どんどん華やかさを増していったのです。
雛人形を飾って祝う『ひなまつり』は江戸の武家社会に広まり、それが一般庶民の間にも定着していきました。
つまり、お金持ちの文化が庶民にも伝わってきたっていうワケですね。
では想像してみましょう。
お金持ちの間で流行して豪華になっていく雛人形、『ひなまつり』の文化は一般庶民にも広まっています。『ひなまつり』には『雛人形』が必要です。
一般庶民はどうやって豪華な雛人形を手に入れるでしょうか。
そう、手が出ないんです。
雛人形を欲しくても買えないんですね。
でも『ひなまつり』は我が子の幸せや健やかな健康を願うもの。高価な『雛人形』はとっても買えない。どうやら『ひなまつり』には『雛人形』が必要らしい、どうしよう。
・・・作っちゃおう!
高価な雛人形が買えなくても、子供を想う気持ちはみんな一緒。お母さんやおばあちゃん、近所の人たちみんなで少しずつ人形を作って持ち寄りました。小さくてもたくさん集まったら素敵!
このようにして子供の幸せを願う『つるし雛』が誕生したのです。
つるし雛には衣食住への願いが込められている
豪華な雛人形は宮中の結婚式をイメージしていて、子供の健やかな成長の他にも、幸せになってほしいという願いが込められています。
当時は『結婚=幸せ』な事であり、相手がお殿様だったりしたら玉の輿で安泰ですものね。
そんな雛人形の代わりとして誕生した『つるし雛』。
たくさんの小さな人形で出来ていますが、どう見ても宮中の結婚式をイメージではありませんね?
そう、『つるし雛』にはこれを作ったお母さんやおばあちゃん、その他の人々みんなの願いが込められています。
一般庶民が作っているんです。
お殿様と結婚できたら、それは安泰でしょうけど・・・
それよりも一般庶民が強く願う事、それは生まれた子が『衣食住に困りませんように』なのです。
お金持ちにとって、衣食住に困るという状況はあまり想像できないものだったのかもしれませんから、雛人形に『とにかく子供が病気になったりしませんように、成長して幸せな結婚ができますように』と願っているのも頷けます。
でも一般庶民はお金持ちとは違います。
『健やかに成長して、衣食住に困らず、そして幸せになれますように。』
こんな願いが『つるし雛』には込められているんですね。
つるし雛の飾りの種類とその意味
つるし雛の飾りはよく見ると少しずつ違いますね。
これらにはひとつひとつ、様々な願いが込められています。
たくさんの願いが集まったもの、それが『つるし雛』なのです。
主な飾りの持つ意味とは
つるし雛には『桃』や『サル』、『薬袋』など、かわいい形のものや変わった形のものがあります。
いくつかの種類とその飾りの持つ意味を紹介します。
桃
邪気、悪霊払い、延命長寿の願いが込められています。
サル
厄除け、『病気が去る(サル)』、『災いが去る(サル)』ようにとの願いが込められています。
薬袋(三角)
昔の薬袋は三角の形をしていたことから『病気になりませんように』との願いが込められています。
赤ちゃんの人形(はいはいの形)
赤ちゃんがはいはいをたくさんして、元気で丈夫に育ちますようにとの願いが込められています。
ネズミ
五穀豊穣を表しており、食べ物に困りませんようにとの願いが込められています。
草履
早く歩けるようになりますように、脚が丈夫で働き者になりますようにとの願いが込められています。
毬
子供の遊び道具、円満な暮らしへの願いが込められています。
馬(春駒)
馬は生命力にあふれている事から、子供が元気に成長しますようにとの願いが込められています。
現代のつるし雛
最近ではとてもカラフルでかわいいつるし雛が販売されていますね。
天井から吊るすタイプだったり、スタンドタイプだったり、お部屋に合わせて選べるようになっています。スペースをあまり必要としないコンパクトなものも売られています。
また、そのかわいらしさからつるし雛を手作りされる方も多いようで、キットも販売されています。
たくさん作るのは時間がかかりそうですが、手芸好きにはたまらない楽しさかもしれませんね。
まとめ
江戸の頃、豪華な雛人形に手が届かなかった庶民が編み出したつるし雛。
雛人形が買えなくとも、子供を想う親の気持ちから『つるし雛』が生まれたのですね。
最近では雛人形を購入しないお宅も増えてきたようです。理由は様々、そもそも必要ないという考え方だったり、雛人形を飾るスペース、金銭的問題と様々です。
もし、雛人形ほど大々的に飾らなくてもいいと考えているならば、つるし雛は小さくてもひな祭りの雰囲気は感じられますし、手作りならば時間はかかりますがコストを抑える事が可能です。
雛人形と一緒に飾るために、また雛人形を持っていないお子さんや2人目のお子さんの専用のものとして『つるし雛』を考えてみるのはいかがでしょう。
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