借りぐらしのアリエッティ別れのシーンを考察!洗濯ばさみと角砂糖を贈った理由も

角砂糖のイメージ画像 借りぐらしのアリエッティ

『借りぐらしのアリエッティ』のアリエッティと翔の別れのシーンでは、翔の『君は僕の心臓の一部だ』という言葉と共にアリエッティは洗濯ばさみを、翔は角砂糖をそれぞれ相手に贈っています。

 

この翔の言葉と別れのシーンの考察、そしてお互いのために選んだ贈り物の理由についても考えていきます。

 

借りぐらしのアリエッティの別れのシーンの考察

『借りぐらしのアリエッティ』では、小人のアリエッティと人間の翔の出会いと交流を描いた物語です。

しかし、種族の違う2人に待っていたのは、別れの運命でした。

 

アリエッティたちが引っ越さなければならない理由

人間の翔は、心臓の病を抱えた12歳の少年で、穏やかな性格の持ち主。

ただし、幼いころからの病気のせいで友人との交流が少なかったのか、人の気持ちを考えるのは得意ではないようです。

静かな環境で過ごすために、1週間だけ祖母の妹が住む古い屋敷にやってきていたのでしたよね。

 

庭で、そして『借り』の途中で翔に姿を見られてしまったアリエッティ。

『見られた』事で警戒を強めるアリエッティの父と母。

 

もしも、この古い屋敷にいるのが、小人の存在を信じている翔の祖母の妹、そして翔だけだったら、『見られる』なんて事はなんでもない事だったのかもしれません。

でも、屋敷には小人の捕獲を狙う家政婦『ハルさん』の存在がありました。

 

 

良かれと思って置いた角砂糖、メッセージ、そしてドールハウスの素晴らしいキッチン・・・

 

一方的な翔の行動が、皮肉なことにハルさんの小人捕獲作戦を引き起こし、アリエッティの家族の引っ越しを確実なものにしてしまいます。

数日後にはいなくなってしまう翔とは違い、家政婦のハルさんはずっと屋敷にいるワケですからね・・・

 

いや、翔だけの責任ではありません。

 

父にきつく止められていたにも関わらず、アリエッティもまた、自らの意志で翔に会いに行っていたのですから!

アリエッティの家族は、ハルさんから逃れるため、生き延びるために住み慣れた屋敷の床下を捨てるという選択をしなければならなかったのです。

 

猫のニーヤが2人の出会いと別れをサポート

冒頭部分ではアリエッティを追いかけていた猫の『ニーヤ』。

ただ、ニーヤに追われたアリエッティの表情には『恐怖』は見られません。

 

つまり、アリエッティにとって猫のニーヤに追いかけ回されるのも日常茶飯事、外遊びの一部だったのでしょう。

 


草むらのアリエッティの存在を、視線でそれとなく翔に知らせたのはニーヤだし、翔の知らぬ間に屋敷を出ていったアリエッティたちの居場所を知らせたのも、やはりニーヤでした。

 

ニーヤは、それとなく翔とアリエッティの出会いと別れをサポートしていたようにも見えますね。

 

君は僕の心臓の一部だという言葉の意味

翔とアリエッティの別れの際の最も印象的な言葉である『君は僕の心臓の一部だ』とは、一体どのような意味を持っていたのでしょうか。

 

翔は心臓に病気を抱え、手術を数日後に控えています。

 

屋敷に来た時には、おそらく『手術しても助からない』と考えていたのでしょう。

物語中の『死ぬのは僕の方だ』という言葉からも、翔が自らの死を意識していた事がうかがえます。

 

この時に思わずアリエッティに投げかけてしまった『君たちは滅びゆく種族なんだよ』という言葉にどれほど後悔したでしょうか。

自分の死を棚に上げ、脅し文句ともとれる言葉です。

 


そして『私たちは簡単に滅びたりしない』というアリエッティの言葉に、どれだけの力強さを感じたでしょうか。

小さくて弱いもの、という概念を覆されたことでしょう。

 


今まで死と隣り合わせだった翔から見ても、行く末に待っているのは滅びの道だろうと推測される小人たち。

その小人たちが未来を信じて力強く生きている。

自分たちの仲間がどこかにたくさんいる事を信じている。

 

これは翔にとっては衝撃的だったに違いありません。

 

人間の指先ほどしかない小人たちが、誰かの手にかかればすぐにでも生命を脅かされるような存在の者たちが、翔なんかよりもずっと生命力にあふれているのですから。

 

アリエッティとの出会いが、翔に『生きる力』を与えたと言ってもいいでしょう。

2人の出会いは、『いつかまた、どこかで会いたい』という翔の希望へと繋がったかもしれません。

 

その未来への活力、つまり翔が生きるための力、病気の心臓を治そうとする気持ちがムクムクと湧き上がったからこそ、『アリエッティが僕の心臓の一部』という言葉があったのではないでしょうか。

 

『君は僕の心臓の一部だ』=翔の生きようとする力、と考えられます。

 

借りぐらしのアリエッティで洗濯ばさみと角砂糖を贈り合った理由

『借りぐらしのアリエッティ』では、最後にアリエッティと翔がお互いに贈り物をしますよね。

 

アリエッティは髪留めに使っていた洗濯ばさみを、翔は角砂糖をプレゼントしますが、この品物を選んで贈った理由についても考察していきます。

 

アリエッティが洗濯ばさみを選んだ理由と翔の気持ち

アリエッティが髪留めに使っている洗濯ばさみを選んだ理由は、2つ考えられます。

 

1つは、翔が突然お別れを言いに現れたため、思いつく適当なものが髪留め意外に見つけられなかった、という事。

お別れのしるしに翔は角砂糖を持ってきていましたから、アリエッティも何かを贈らなければならないという気持ちになったのかもしれません。

 

もう1つは、少なからず好意を持っていた翔に対し、いつまでも自分を忘れないで欲しいという思いから。

洗濯ばさみの髪留めは、アリエッティにとっては心を決めた時の象徴です。

『借り』の時、意を決して翔に会いに行く時、そして新天地に向かって旅立つ時。

 

 

そういう気持ちの切り替えにも使っていた洗濯ばさみですから、アリエッティにとっては大切なものに違いないのですが、どうしても翔にもらってほしかった。

きちんとお別れをしたい。でも翔には、いつまでも自分の事を忘れてほしくない、という願いのようなものを感じました。

 

そこにはもちろん、手術の成功への祈りも込められていたはずです。

 

小さな洗濯ばさみを受け取った翔は、それを大切に持ち帰った事でしょう。

そして手術の日も、その後も、小さな髪留めを眺めてはアリエッティの事、あの古い屋敷の事を思い出していたに違いありません。

 

翔が角砂糖を選んだ理由とアリエッティの気持ち

アリエッティが初めての『借り』で失敗したあの日、借りようとしていたものは『角砂糖』と『ティッシュ』でした。

 

ティッシュに関しては、翔から見れば『借り』の対象だったのかどうかの判断がつかないはずです。

なぜなら、ティッシュを引き抜く前に翔とアリエッティの目が合っていますから。

ひょっとしたら、ティッシュで遊んでいるように見えたかもしれません。

 

一方、角砂糖は本来あるはずのないところに転げ落ちたもの。

つまり、アリエッティがそこまで運んだに違いないと考えたのでしょう。

 

角砂糖を家に持ち帰るつもりだったのだろう、でも自分(翔)の姿に驚いて落としてしまったらしい、申し訳なかった・・・

 

その後、翔は『わすれもの』の角砂糖をアリエッティに届けに行きますが、アリエッティは受け取りませんでした。

 

翔にとっては、どうしてもアリエッティに受け取ってもらいたかった角砂糖。

 

ドールハウスの豪華な食器よりも、フワフワのソファーよりも、なかなか受け取ってもらえていなかった角砂糖をぜひ受け取ってほしい。

角砂糖をアリエッティに贈ることで、翔の気持ちはようやく落ち着くのではないでしょうか。

 

つまり、ここでも翔は『身勝手』ぶりを発揮していました。

 

何と言っても角砂糖は『母ホミリーが望んだもの』であり、アリエッティは自分の不注意で落としてしまった角砂糖を、失敗した『借りもの』を、わざわざ返してほしいなんて少しも考えていなかったのではないかと思うのです。

 

ただし、せっかく手に入った角砂糖ですから、ホミリーはさっそくシソジュースやらお茶に入れたりやら、喜んで使ったことでしょう(笑)

 

まとめ

『借りぐらしのアリエッティ』では、古い屋敷の床下に住んでいた小人のアリエッティと人間の翔の、数日間の交流の様子が描かれています。

そして、原作には無い『お別れ』のシーンも盛り込まれています。

 

出会いがあり、別れがある。

この『別れ』で、ようやく翔は『生きる』希望を、アリエッティは『新天地』への希望を得る事ができたのではないでしょうか。

 

気持ちの切り替えのためには、絶対に必要だった『別れ』のはずです。

 

きちんとした形の『別れ』がなければ、2人の思いはずっとあの古い屋敷に留まってしまっていたかもしれません。

 

お別れのしるしは、洗濯ばさみと角砂糖。

アリエッティは翔に髪留め用の洗濯ばさみを、翔はアリエッティに角砂糖を贈っています。

 

私を忘れてほしくない。

あの時渡せなかった角砂糖を受け取ってほしい。

 

残るものと残らないもの、という対比も面白いですよね。

お互い、自分の心をこめた贈り物である事には違いありません。

 

ただし、翔はいつまでも洗濯ばさみを眺めているだろうし、アリエッティはすぐに角砂糖をホミリーに渡してしまった事でしょう。

 

だって、あんなに『母のホミリー』が欲しがっていた角砂糖なのですから!

 

 

切ない別れ、その後の翔くんが気になります・・・

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