『となりのトトロ』のお父さん役の声優さん、他のキャラクターとはちょっと違った感じがしませんか?
キャラクターらしくないというか、演じているにしてはイマイチかなぁ・・・とか。
棒読みっぽい喋り方、もちろんわざと『棒読み風』にしているわけではありません。
下手なんじゃないかな、という意見もありますが、これにはちゃんと理由があったのです。
目次
トトロのお父さん役の声優が下手すぎる?
トトロに登場するサツキとメイのお父さん、『草壁タツオ』の声優さんが何だか棒読みで下手すぎるような気がする・・・
☞続き たぶん。」というコピーを提案しましたが、宮崎駿監督の希望で「まだ日本にいるのです。」にコピーを変更。「でも、やっぱり『たぶん。』は必要だと思ってつけさせてもらいました」と糸井さん。 #となりのトトロ pic.twitter.com/B0hUw3lQlV
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そのように感じた方も多いかもしれませんね。
このお父さん役の声優さん、実は本業は『声優』ではありません。
トトロに登場するサツキのメイの父親役は糸井重里
【有料会員限定記事】ほぼ日・糸井重里さんに聞く ネットとリアルの関係性https://t.co/XdnxTGmgSC#ほぼ日 #糸井重里 #インタビュー #渋谷パルコ #PARCO #繊研新聞 #繊研 #senkenplus #senken pic.twitter.com/o1eY9bXEva
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サツキとメイのお父さん役を演じたのは『糸井重里(いといしげさと)』さん。
糸井さんはコピーライター、エッセイスト、タレント、作詞家など様々な顔を持ち、株式会社ほぼ日の代表取締役社長など、多方面で活躍されている方です。
糸井さんは『となりのトトロ』で、コピー(作品などをアピールするための短い文章の事)を担当し、それ以降ジブリ作品では数々の印象的なコピーを誕生させています。
ちなみにトトロのコピーは『このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。』
他にも『魔女の宅急便』の『おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。』、『もののけ姫』の『生きろ。』などは目や耳にした事がある方も多いかもしれませんね。
糸井重里は声優ではない
糸井重里さんは『声優』さんではありません。
何度か映画作品への出演もされていますが、こちらも本業というワケではなく、『となりのトトロ』への声優としての出演も、ご本人が希望したものではなく、宮崎駿監督の希望により実現したものでした。
『お父さんの声をやってほしい』に一番ビックリしたのは、糸井さんご本人だったかもしれません。
糸井重里のトトロでの演技力
『となりのトトロ』での糸井重里さんの演技力は、『なかなかのもの』と言えるのではないでしょうか。
上手いかどうかという面ではそもそも何をもって『上手い』とするのかが難しいところではありますが、少なくともプロの声優が演じる『お父さん』とは異なって聞こえてくる事は確かでしょう。
声優さんの『演技』を標準としてみるならば、糸井さんの演技が『下手なんじゃないか』というように感じる方がいるのも当然の事なのかもしれません。
ただ、このような演技も宮崎駿アニメの見どころであり、醍醐味、宮崎監督らしいと思えてくるという不思議さも持っています。
トトロで糸井重里がセリフ棒読みでも起用された理由
『となりのトトロ』では、なぜ他のキャストと違って『お父さん』役にはプロの声優さんが選ばれなかったのでしょうか。
一部からは『棒読み』とも言われてしまう糸井重里さんが選ばれたのには、理由があったようです。
宮崎駿監督の鶴の一声で糸井重里を起用
『となりのトトロ』制作の際、他のキャラクターと同様に『お父さん役』のオーディションも開催されたようです。
でも、宮崎駿監督はどの声も気に入らなかったのだとか。
そんな状況で宮崎監督の頭に思い浮かんだのは、コピーを考える際の打ち合わせに娘さんを連れてきていた糸井さんの姿。
その時の糸井さんの姿が、当時宮崎監督が思い描いていたサツキとメイのお父さんに近かったのだそうです。
『糸井さんはどうですか?』の宮崎監督からの鶴の一声。
さっそく糸井さんの声をテストして良かったために採用、結果としてあの味のあるお父さんの声が生まれました。
宮崎駿監督は本職の声優を使わない事で有名
宮崎駿アニメが好きな方の間では有名な話ですが、宮崎監督はプロの声優さんの声が苦手とも言われています。
プロの声優さんの演技ってやはり上手ですから、逆に宮崎監督にとってはちょっと気になる部分にもなっている、という事らしいのです。
つまり宮崎監督が求めているのは、声優さんが声だけで演技しているその演技力ではなく、もっと自然な感じ、普通な感じ、その辺にいる人間っぽい部分を重要視しているようなのです。
『風立ちぬ』の堀越二郎役に選ばれた庵野秀明監督にも仰天しましたけど・・・
宮崎監督が求めるものは、演技力よりも存在感そのものという事ですね。
棒読みに隠された宮崎監督が求めたもの
サツキとメイのお父さんが『棒読み』だと言う声も聞かれますね。
確かに、まわりはプロの声優さんですから、棒読み感が目立ってしまったのかもしれません。
でも前述の通り、宮崎駿監督が求めるものは演技力ではありません。
『ジブリの教科書3』の宮崎監督と糸井さんの対談によると、プロの声優さんだと、子供を大切に想うあったかいお父さん、つまり理想のお父さん像になってしまう。
でも、サツキとメイのお父さんに求めたものは、『あったかい理想のお父さん』ではなかった。
続き→現実にはこんなに大きなクスノキはありませんが、子どもが「大きいなぁ」と思う、その感情のままで描くとあのサイズになってしまうのだと宮崎駿監督。この木の迫力は、アニメだからこそ可能になる表現だったのです。 #Kinro #となりのトトロ #夏はジブリ #男鹿和雄 #野崎俊郎 pic.twitter.com/16kn16d0lT
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まだ若くて、完璧なお父さんではないどこか不器用なお父さん。
娘たちとは友達同士のような関係のお父さん。
そんなお父さんであるためには、そっけなくて普段に近いままの声。
宮崎監督が求めたのは、糸井さんのような不思議でぞんざいな、あまり意味の込められていないような喋り方だった、というワケです。
まとめ
『となりのトトロ』は1988年、昭和63年に公開された映画です。
昭和63年と言えば、30年以上も前ですね。
その当時から、そして今でも愛され続けているアニメであり、オープニングテーマの『さんぽ』は幼稚園や保育園では定番の曲になりました。
懐かしい日本の風景、子供にしか見えない世界、不思議な生き物・・・
そんなサツキとメイの物語に関わる人物として重要な『お父さん』。
そのお父さんを演じるのは、コピーライターの糸井重里さんです。
声優が本業ではない糸井さん。
下手に聞こえるし、棒読み・・・?
しかしその不思議な声と演技力は、宮崎監督が求めた『完璧とは言えないお父さん』に命を吹き込みました。
今も変わらず愛され続けている『となりのトトロ』。
宮崎駿監督の思いを知れば、サツキとメイのお父さん『草壁タツオ』のその声も、『となりのトトロ』を作り上げている重要な一部分として楽しむことができそうですね!
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