コクリコ坂からの朝ごはんにお母さんの分があるのはなぜ?陰膳への海の気持ちも考察

ノスタルジックな船舶のイメージ画像 コクリコ坂から

ジブリアニメ『コクリコ坂から』には、海(メル)が早起きして作った、とても美味しそうな朝ごはんのシーンがありますよね。

ご飯、お味噌汁、ハムエッグ。

 

弟の陸は中学2年生の食べ盛りのため、ハムが3枚の特別ハムエッグでも足りないようです。

しかもコクリコ荘にはもう一人、食欲旺盛な下宿人『広小路』がいます。

 

『お母さんの分は陸と広小路さんで分けなさい』

 

・・・あれ?お母さん?どこにいるの?

どこにも見当たらない『お母さん』、おばあちゃんが勝手に『食べてもいい』なんて言うお母さんの朝ごはんは、なぜ準備されているのでしょうか。

 

コクリコ坂からの朝ごはん・お母さんの分の正体は陰膳

朝食シーンに登場する『お母さんの分』の朝ごはんは、『陰膳(かげぜん)』と呼ばれるものです。

あまり馴染みのない言葉ではありますが、お母さんの無事を願っている大切なものなのです。

 

海のお母さんはアメリカ留学をしている

コクリコ荘の朝ごはんシーンには、海のお母さんと思われるような人物は登場していませんよね。

 

実は海のお母さんの職業は大学の先生で、『今はアメリカに行っている』という設定のため、冒頭部分には登場していないのです。

つまり、アメリカ留学中です。

 

原作漫画でもお母さんはアメリカに行ってしまっていましたが、職業は先生ではなく『写真家』なので、大きく設定が変更されたという事ですね。

 

陰膳は不在者のためのお供え物

『陰膳(かげぜん)』は、長期間に留守にする家族や亡くなった人に対し、家に残っている者が供える御膳の事を指します。

 

本来、陰膳の中身は精進料理と同じもののようです。

しかし、海の『みんなで食べたい』という気持ちからでしょうか、お母さんのための陰膳は『みんなと一緒のもの』が用意されています。

 

ちなみに陰膳は『残さない』もののようですから、食べ盛りで食欲旺盛な『陸』や、食いしん坊の『広小路さん』には常に狙われているかもしれませんね(笑)

 

 

おばあちゃんの『陸と広小路さんで分けなさい』は、つまり、いつもその2人が食べているという事なのでしょう。

 

お母さんの朝ごはんや信号旗を欠かさない海の気持ちを考察

毎日の習慣として、帰ってこないお父さんのためには信号旗を揚げ、アメリカ留学をしているお母さんのためには陰膳を用意する海。

信号旗、そして陰膳への海の気持ちを考察します。

 

信号旗はお父さんの死を受け入れられない気持ちから

早起きして、毎日毎日『U・W旗(貴船の安全な航行を祈る)』を掲げている海。

これは、朝鮮戦争で亡くなったお父さんのためのものです。

 

亡くなったお父さんのために安全な運行を祈っているの?と、矛盾を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、一種のおまじない・願掛けのようなものだと考えられます。

亡くなった事を信じたくない気持ちの表れではないでしょうか。

 

 

海のお父さんは『U・W旗』を掲げておくと無事に帰ってこれると教えてくれました。

だから、『まだ』帰ってきていないお父さんのために、旗を揚げ続けているのです。

 

信号旗の習慣を『辞める』なんて、考えもしないでしょう。

 

 

2枚の信号旗の意味など詳しい内容は、

こちらの記事でも解説しています。

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陰膳はお父さんが帰ってこなかった恐怖心も影響か

ある日を境に、お父さんは帰らなくなりました。

おそらく『行ってきます』と出ていった父の、『ただいま』を聞くことなく、10年もの時だけが過ぎていったのでしょう。

 

お父さんが帰ってくる事を願って揚げ続ける信号旗。

帰ってこない父の事を考えると、出掛けて行った母も帰らないのではないかという恐怖心に捕らわれる事もあったかもしれません。

 

赤字ギリギリの状態で下宿屋コクリコ荘を営んでいる松崎家。

それでも海は、お母さんの分の陰膳を無くすことなんて考えられないのです。

 

 

なぜならそれは、母は無事に帰ってきてほしい、そんな海の強い願いが込められているはずだから。

 

おばあちゃんにとっては『当たり前の習慣』の陰膳でも、きっと海にとっては『特別な』陰膳なのではないでしょうか。

 

まとめ

海は本当は両親が恋しいんです。

夢の中に出てきたように、大好きなお父さんとお母さんと一緒に暮らしたいと願っているのです。

 

『U・W旗』があれば無事に帰ってこれると教えてくれたお父さん。

かつては家で朝ごはんの準備をしていたお母さん。

 

亡くなった事は頭では理解しているけれど、やはりお父さんのための信号旗を揚げてしまう海。

帰ってこなくなったお父さんの事を思い出してしまうのか、どうか無事に戻ってきてほしいという願いを込めて準備するお母さんのための陰膳。

 

お父さんが亡くなった事も、お母さんが留守にしている事もあまり気にする様子のない妹や弟に比べ、海の両親への気持ちは強いのでしょう。

 

いつも誰よりも頑張っているのですから、海だって時にはお父さんやお母さんを頼りたいですよね・・・

ジブリアニメ『コクリコ坂から』は、なんだか切なくなる物語でした。

 

 

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