ここ数年、毎年暑くなってくると頻繁に聞こえてくる『ゲリラ豪雨』。
激しくたくさん降る雨、というイメージが強いゲリラ豪雨ですが、このゲリラ豪雨の原因が『ヒートアイランド現象』によるものと言われているのをご存知でしょうか?
ヒートアイランド現象とゲリラ豪雨の関係、原因や発生のメカニズムについても紹介します。
目次
ヒートアイランド現象とゲリラ豪雨の関係
近年多発するゲリラ豪雨は、都市部の気温が上昇する『ヒートアイランド現象』が影響していると言われています。
ヒートアイランド現象によって、夏の風物詩『夕立』のような生易しいものではない、災害をもたらすような激しい豪雨となっていると推測されており、発生の回数も増加しています。
ヒートアイランド現象が急激に発達する積乱雲をもたらす
都市部の気温は、郊外に比べて高くなります。
その理由は、アスファルトやコンクリートで覆われていて熱を吸収しやすいという事や、大量のエアコンやOA機器などからの排熱がある事。
このように、地表近くの空気がどんどんあたためられるような状態は、あっという間に上空の空気との気温差をより大きくし、強い上昇気流を生み出します。
上昇気流は、積乱雲を急激に発達させることになります。
積乱雲は大気の状態が不安定な気象条件で発生しますが、『不安定』とは、上空に冷たい空気があり、地表にはあたたかい空気の層がある状態。
地表近くのあたたかい空気は上昇しようとし、上空の冷たい空気は下降しようとするためにかき混ぜの状態が起き起き、その際に積乱雲が発生します。
急激に発達した積乱雲がゲリラ豪雨をもたらす
ゲリラ豪雨は、急激に発達した積乱雲によってもたらされます。
積乱雲は高さが10~15㎞と、とても背の高い雲です。
しかし横の広がりは数㎞~十数㎞。
1つの積乱雲のもたらす雨の範囲はとても狭いのですが、条件によっては広域にわたって同時多発的に積乱雲が発生と消滅を繰り返す事もあります。
積乱雲の下は真っ暗になり、大粒の雨が地面をたたきつけるように激しく降り、雷や雹(ひょう)、竜巻などを伴う事も。
短時間のうちにもたらされた豪雨は、下水道などで処理できず地下街に流れ込んでしまったりして、その機能を停止させたり、時には人命に関わる事態を引き起こします。
『ゲリラ豪雨』は大きな被害をもたらす可能性があり非常に危険ですが、狭い範囲に突発的に起こるため、その発生を予測するのが難しいとされています。
ヒートアイランド現象の原因
ヒートアイランド現象はなぜ起きてしまうのでしょうか。
その原因と対策について説明します。
ヒートアイランド現象とは
ヒートアイランド現象とは、郊外に比べて都市部の気温が高くなってしまう現象のこと。
都市部の構造変化によって、地表の熱が下がりにくくなっています。
実はヒートアイランド現象によって、東京ではこの100年の間に気温が3℃も上昇しています。
たった3℃と侮ってはいけません。
日本では1750年頃の工業化前に比べて気温が1℃上昇していますが、たった1℃でも大きな影響が出ています。
- 猛暑による熱中症の増加
- 熱帯夜の増加
- 高温による農作物の品質の低下
- 漁獲量の変化
- 生態系の変化
- 豪雨の頻発
ヒートアイランド現象によって、日本全体での1℃上昇を大きく超え、東京は100年前に比べて3℃も上昇しています。
このまま気温の上昇が続けば、『四季が美しい日本』ではなくなってしまうかもしれません。
ヒートアイランド現象の原因3つ
ヒートアイランド現象の主な原因は3つあります。
- 地表にアスファルトやコンクリートが使われるようになったこと
- 都市部の建物の密集化
- 人工的な排熱の増加
ヒートアイランド現象の原因は、都市部を覆うコンクリートやアスファルトが太陽の熱を吸収して熱くなることにあります。
また、建物の密集化、エアコンや工場などからの排熱もヒートアイランド現象の原因となっており、身の回りにはパソコンなどのOA機器など、熱を発するものであふれています。
ヒートアイランド現象への対策
ヒートアイランド現象は、緑化などの環境整備によって緩和する事ができます。
アスファルトやコンクリートを、表面温度を抑える機能を持たせたものに変えていくこと、熱を発する製品の省エネルギー化などによっても緩和できます。
アスファルト舗装を保水性舗装や遮熱性舗装と呼ばれるものに変更したり、屋上緑化や壁面緑化などがこれに当てはまります。
緑のカーテン、打ち水などは個人でも十分に参加できるものです。
ヒートアイランド現象には積極的な対策が必要です。
ゲリラ豪雨発生のメカニズム
ゲリラ雷雨はどのように発生しているのでしょうか。
夕立と何が違う?という部分にも焦点を当ててみたいと思います。
ゲリラ豪雨は正式な気象用語ではない
『ゲリラ豪雨』は、主に梅雨の後半から夏の間に突然もたらされる局地的な豪雨を指します。
しかし、実は正式な気象用語ではありません。
ニュースなどで耳にすることが多い『ゲリラ豪雨』は、気象庁では『集中豪雨』、『局地的豪雨』などと表現します。
近年、特に都市部では『ゲリラ豪雨』と呼ぶにふさわしいような激しく局地的な大雨が頻発しています。
急激に空が暗くなったと思ったとたんに激しく雨が降り出し、短時間でも都市機能をマヒさせてしまうような事もあります。
ゲリラ豪雨発生のメカニズムと夕立との違い
ゲリラ豪雨と同様に、『夕立』も実は正式なものではありません。
『夕立』は夏の雷雨やにわか雨の事なのですが、夏を象徴する雨を表している言葉として浸透しています。
こちらもゲリラ豪雨と同様、気象庁が積極的に使う言葉ではありません。
『ゲリラ豪雨』も『夕立』も夏に見られる雨。
その仕組みを説明します。
夕立発生のメカニズム
- 夏の日中に地表が照らされ、その上の空気をあたためる
- その空気は上昇気流となり上空へのぼっていく
- 上昇気流が強くなると積雲がつくられる
- 積雲がより大きく発達していくと入道雲となる
- 入道雲が発達すると積乱雲になる
- 積乱雲が夕立を発生させる
夕立が夕方に降りやすいのは、午後に地面付近の気温が高くなると上空の空気との温度差が大きくなり、上昇気流が発生しやすくなるためです。
ゲリラ豪雨発生のメカニズム
夕立もゲリラ豪雨も、雨を降らせるメカニズムはほぼ同じです。
夕立のメカニズムと若干異なるのは、都市部においてはコンクリートに覆われていることやエアコンなどからの大量の排熱によって、簡単に地表があたたまってしまうという事。
すると、急激な上昇気流が発生し短時間で積乱雲が発達、ゲリラ豪雨を発生させる原因となります。
夕立とゲリラ豪雨の違い
夕立もゲリラ豪雨も、正式な気象用語ではありません。
『夕立』は風流な感じがしますね。
涼しさを感じさせる夏の通り雨というイメージで、災害とはなかなか結び付きません。
一方の『ゲリラ豪雨』は、気象庁が『集中豪雨』・『局地的豪雨』などと表現するように、激しい雨が災害をもたらす事をイメージするもの。
発生の予測も難しいため、ニュース番組などでは『ゲリラ的に発生する豪雨』という意味で『ゲリラ豪雨』という言葉を使っています。
この両者の大きな違いは、災害をもたらすかどうかにあります。
ゲリラ豪雨にはマイナスのイメージがありますね。
まとめ
『ゲリラ豪雨』。
近年ではこの言葉を聞かない年はありません。
そして夕立と同じメカニズムではあっても、風流を思わせるような生易しいものではありません。
ヒートアイランド現象とゲリラ豪雨との関係性も指摘されています。
都市部でのコンクリートや人工的な排熱が増加する事によって、上空の空気との気温差はあっという間に大きくなってしまいます。
気温差は急激な上昇気流を発生させ、発達した積乱雲が豪雨をもたらし、時に大きな災害となります。
災害をもたらす事もある『ゲリラ豪雨』。
原因と言われる『ヒートアイランド現象』を緩和させるために、ひとりひとりの意識改革が不可欠のようです。
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