実写映画版の『君の膵臓をたべたい』は、膵臓の病気を抱えて余命わずかな少女『桜良(さくら)』と、内気な少年『僕』の友達とも恋人とも言い表せない関係だった学生時代の日々を思い出していく、というストーリー。
原作小説には無い、12年後の『僕』が登場する事でも話題になりました。
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2人は主人公の“過去”を演じ、“現在”は北川景子と小栗旬が演じる。2017年夏に公開… pic.twitter.com/TioU8aPzuG
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そんな実写映画版で気になるシーンのひとつが、大人になった『僕』が、桜良が生前に書き残した『遺書』を図書館から発見する場面ではないでしょうか。
この遺書は桜良がいつ書いたのか、どうして図書館にあったのか、そしてなぜ12年も経ってから発見されたのか・・・気になりますよね。
目次
君の膵臓をたべたい映画版の遺書はいつ書いたもの?
かなりの時間が経過してしまってから発見された、桜良が書き残していた『遺書』。
それは桜良の親友『恭子』、そして仲良しの『僕』に宛てたものでした。
この遺書は、いつ書かれたものだったのでしょうか。
遺書を書いたのは退院の日・僕に会いに行くまでの間
親友の恭子に宛てたものはともかく、『僕』に宛てた遺書が存在するという事は、つまり『僕』と仲良しになってから書かれたものである事に間違いはありません。
そして遺書が隠されていたのは、桜良の家に置かれていた『星の王子様』のブックケースの中。
このことから、桜良の家に行った日の後に書かれたものであることもわかります。
『僕』が桜良の家に行った後からは、桜良はずっと入院生活をしています。
この入院生活では、余命の残りも少なくなり、しだいにご飯も食べられなくなっていく様子が描かれています。
死期が近づく入院生活の中で、『親友』と『仲良し』に宛てた遺書を書こうと思い立ったのでしょう。
次の『退院』は、あくまでも人生の最期を謳歌するためのものなのです。
遺書を実際に書いたのは、退院日、その日のうちに白いワンピースを着て赤いリュックサックを持って『僕』に会いに行くまでの間。
入院中に借りていた本を返してから・・・というのはタテマエで、実際には、遺書を書いて図書館に隠しておくという『宝さがし』の準備のためだったというワケです。
簡単に『遺書』を書けるとは考えにくいので、入院生活の中である程度の構想を練っていたのでしょう。
その構想には、おそらく『誰に書くか』、『内容はどうしよう』、『どうやって見つけてもらおうか』などが含まれていたと考えられます。
そして一時退院してすぐにそれを実行した、という事ですね。
いつどうなるかわからない病状だったからこそ退院してすぐ、はやる気持ちを押さえつつ、『僕』に会いに行く前に図書館に立ち寄ったのでしょう。
桜良の遺書の内容と意図
桜良が書いた遺書は、親友の『恭子』に宛てたものと、仲良しの『僕』に宛てたものの2通。
彼らが通う学校内の図書館から発見されている事から、原作にあるような家族への遺書は含まれていなかったと思われます。
恭子へ宛てた遺書の内容
親友の恭子は親友でありながら12年間、『遺書』を受け取るまで桜良の病気の事を知りませんでした。
それは、意図的に桜良が隠していたから。
病気の事を大好きな恭子に話してしまうと、それまでの日常が、ただ笑ったりする日々が無くなってしまうような気がして怖かった。
だから病気の事を、親友にさえ伝える事ができなかったのです。
遺書に書かれていたのは、病気を隠していた事への謝罪、恭子の幸せを願っている事、そして『仲良しくん(僕)』と友達になってほしい事。
結婚式の直前だというのに、恭子は『遺書』の内容に号泣。
12年の時を経ても、恭子にとって桜良はとても大切な存在でした。
僕(春樹)へ宛てた遺書の内容
最後の入院生活の中で突然、桜良が僕に挑んできた『真実か挑戦か』ゲーム。
おそらく何か聞きたい事があるのだろうと推測しますが、『僕』が勝ってしまったために、結局あの時に桜良が何を聞きたかったのかが不明のまま。
その答えが『遺書』に書かれていました。
真実か挑戦かのゲームで聞きたかったこと。
それは、『なんで名前で呼んでくれないの』という事でした。
『僕』は1度も桜良を名前で呼んだことがありません。
いつも桜良の事を『君』と呼んでいました。
桜良はその事について、実は嫌われているんじゃないか、そう思ってしまっていたのです。
でも遺書の中には『僕』の性格から、桜良が自ら導き出した答えが書かれています。
それは人付き合いが苦手で周りと関わる事のない『僕』が、必ず失うと分かっている『桜良』を、『友達』や『恋人』という『特別な誰か』にしたくないという事。
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『僕』は怖かったんです。
『特別な誰か』を失う事が。
『君の膵臓をたべたい』冒頭にも登場する星の王子様の一場面、『さよならをして悲しませるくらいなら、仲良くならないほうがよかった』と嘆く王子さまの姿に通じています。
しかし遺書には、そんな風に誰とも心を通わせず、一人で生きている『春樹(僕)』がスゴイのだ、という内容も書かれていました。
周りと関わることなく『自分』を持っている春樹。
その魅力を周りの人にも知ってほしい、面倒でも人と心を通わせて、自分の分まで生きてほしい、と。
遺書によって、ようやく『僕=志賀春樹』である事も判明しました。
遺書が書かれた意図
『親友』と『仲良し』の2人に宛てた遺書は、一冊の本のブックケースの中に隠されていました。
しかし困った事に『親友の恭子』と『仲良しの春樹』は犬猿の仲。
どうしても『親友』と『仲良し』が友達になってほしかった桜良は、わざと2人分の遺書を同じ本の中に隠したのでしょう。
もちろん、2人にはしっかりと感謝などを伝えたい。
でも、先に春樹が見つけて恭子に宛てた遺書も読むだろう。
春樹なら、自分の思いをわかってくれて、恭子へ遺書を届けてくれる。
そしてその遺書が、2人を『友達』にするキッカケになってくれれば・・・
そう考えての事だったのではないでしょうか。
桜良の遺書が12年後に発見された理由
桜良の書いた遺書は、どうして12年も経ってから発見されたのでしょうか。
その理由はおそらく、『図書委員の仕事を途中で投げ出したから』でしょう。
遺書はすぐに発見されるはずだった
もう目の前に死期が迫っている桜良にとって、この先『図書委員』として『僕』と一緒に仕事をすることは無いと考えていたのでしょう。
『僕』と一緒に進めてきた館内整理の仕事はまだ終わっていないけれど、自分にはもうできそうもない。
だから桜良は自分の死後、再び『僕』が館内整理をした時に始まる『宝さがし』ゲームを思いついたのです。
まだ整理されていない900番台の本。
文庫版の『星の王子様』に描かれていたものと同じイラストが描かれた貸出カード。
桜良が亡くなった後、『僕』が図書委員としての仕事を投げ出したりしなければこの『遺書』は、桜良の死後、そう時間が経たないうちに見つかるはずでした。
12年間も誰にも見つからなかったのはなぜ?
『遺書』が隠された本が置いてあったのは、図書委員以外は立ち入ることができない、いわゆる閉架部分。
つまり、用事が無ければ立ち入らないし、利用頻度の低い本が集まった場所です。
今回のように、図書館の取り壊しがなければ、そして『図書委員』としての仕事に熱心な生徒がいて、900番台の本の整理がされていない事、イタズラ描きがされたカードの事を気にしていなかったら・・・
永遠に遺書は見つからなかったかもしれません。
12年後の発見は偶然か必然か
桜良は、すべてが『自分で選んだ』ものだと考えています。
偶然でも運命でもなく、自分で選んできた道にいるのだと。
行こうと思えば違う道にも行けたのに、選んだのは自分。
桜良が亡くなった後は図書委員の仕事を投げ出す道を選んだ。
人付き合いが苦手なのに、桜良の『先生に向いている』という言葉で先生になる道を選んだ。
断ろうと思えばできたのに、母校での蔵書整理を手伝う事を選んだ。
図書委員の生徒に話しかけ、過去を語る事を選んだ。
選んできた道があって、今があるのだという考え方をすれば、12年もの時が経ってから母校の図書館で『遺書』が発見された事も『偶然』ではなく『必然』だったのかもしれません。
まとめ
実写映画版『君の膵臓をたべたい』は、12年後の大人になった『僕』の視点から過去の『僕』を見られる、いわば特別バージョンの『キミスイ』となっています。
そんな実写版のラストに登場する『桜良の遺書』。
それは桜良のちょっとした『ゲーム』であり、『親友』と『仲良し』が友達になるための仕掛けでもあり、自分の思いを伝える手段でもありました。
本当はもっと早く見つけてほしかったかもしれません。
もっと早くに見つけてくれるものだと思っていたかもしれません。
早く見つけてよーって、桜良が天国でハラハラしていたかもしれません。
でも、ちゃんと『僕』の手によって発見されました。
12年もの時を要したけれども、桜良の思いは『親友』にも『仲良し』にも届けられたのです。
それが親友『恭子』の結婚式当日であった事も、おそらく偶然ではなく『必然』だったのでしょう。

実写版キミスイのロケ地はこちらの記事でまとめています


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